最近日本では大規模な為替変動や戦後最大の日経平均下げ幅を記録するなど、今後の景気が心配になるニュースが多く流れています。
そんな不安定な社会情勢を受け、中小企業経営者の皆様は漠然とした経営に関する不安を感じているのではないでしょうか?
周囲に相談する人がおらず、一人で抱え込んでしまう経営者も少なくありません。
そもそも、経営に関する相談事は、単に経験があるだけでは解決できないことも多いものです。
そのような時に、専門知識やスキルを持つ中小企業診断士は、実践的な解決に向いている存在です。
本記事では昨今の不安定な情勢を踏まえ、中小企業が今注力すべきポイント3点について、中小企業診断士の立場から簡単に解説させていただきます。
1.中小企業診断士とは
中小企業診断士とは、経営や事業の改善に関する専門知識を持ち、中小企業の経営者をサポートする国家資格の保有者です。
この資格を取得するためには、経営理論や財務、マーケティング、人事管理など、幅広い経営知識を網羅する試験に合格する必要があります。
中小企業診断士は、企業経営に関する高度な専門知識と実践的なスキルを持つとされています。
中小企業診断士の信頼性は?
中小企業診断士は、国家試験に合格した専門家であり、経営コンサルティングのプロフェッショナルです。
経済産業省の管轄の下、資格取得者は定期的に研修を受け、最新の経営理論やビジネス環境の変化に対応できるようにスキルを磨いています。
国家資格者として認められたコンサルタントとして、信頼度の高い顧客支援を行います。
2.まずはここから!経営の改善3つのポイント
中小企業が抱える課題は、個々の会社毎に様々なものがあります。
今回の記事では、経営改善の第一歩として中小企業診断士が検討をお勧めするポイントを3つご紹介いたします。
以下3つのポイントは企業の経営改善をする上で必ず必要になることで、これらの検討なくして抜本的な改善は難しいため「初めの一歩」としてピックアップさせていただきました。
ポイント1:強みの再発見と差別化
競争に勝つための自社のセールスポイントを見つけましょう!
ポイント2:採用チャネルの強化
人がいなければ企業は成長しません。採用力の強化を進めましょう!
ポイント3:財務状況の把握
自社の財務状態は健全でしょうか?改めて財務状況を把握しましょう!
3.ポイント1:強みの再発見と差別化
中小企業が自社の強みを発見することは、競合と差別化するための鍵となります。
強みを理解することで、自社が他社よりも優れている点や独自性を明確にし、それをもとに効果的なマーケティングや戦略を展開できます。
顧客に対して独自の価値を提供できるようになれば、競争力が強化され、持続的な成長を実現することが可能になります。
つまり、自社の強みを活用し、競合との差別化を図ることは、成功への不可欠な要素というわけです。
「特に際立った特徴がない事業を行っているから、自社に強みといえるものはないのでは?」
「強みが大事なのは理解できたけれど、どうやって見つければいいのかわからない」
どのように自社の強みを再発見すれば良いのでしょうか?
自社の強みを再発見するために役立つフレームワークを2つ紹介いたします。
(1)VRIO分析
VRIO分析は、企業が持つリソースや能力の競争優位性を評価するためのフレームワークです。
この分析を通じて、企業がどのように競合に対して持続的な競争優位を築けるかを判断することができます。
VRIOは、以下の4つの要素の頭文字から成り立っています。
(ⅰ)Value(価値)
資源や能力が市場の機会を捉えたり、脅威に対応したりするうえで価値があるかどうかを評価します。
もし、そのリソースが顧客のニーズを満たしたり、コスト削減に貢献するのであれば、その資源は価値があると判断されます。
(ⅱ)Rarity(希少性)
そのリソースや能力が競合他社にはない、もしくは非常に少ない場合、希少性があると見なされます。
希少なリソースを持つことは、競合に対して優位に立つための重要な要素です。
(ⅲ)Imitability(模倣困難性)
他社がそのリソースや能力を模倣することがどれだけ困難かを評価します。
模倣が難しいほど、そのリソースは持続的な競争優位をもたらします。
模倣困難性は、技術的な複雑さや独自のノウハウ、企業文化などに基づくことがあります。
(ⅳ) Organization(組織)
企業がそのリソースや能力を最大限に活用できるように組織化されているかどうかを評価します。
これには、企業の構造、プロセス、文化などが含まれます。
組織が効果的にリソースを活用できるよう整備されている場合、その競争優位は持続されやすくなります。
<VRIO分析の結果の見方>
全ての要素(V、R、I、O)を満たす場合
企業は持続的な競争優位を享受できます。
価値(V)があるが、希少性(R)がない場合
競争上の同等性を示し、優位にはなりません。
価値(V)と希少性(R)があるが、模倣(I)が容易な場合
一時的な競争優位を得るが、すぐに失われる可能性があります。
組織的に活用できない場合(O)
価値や希少性、模倣困難性があっても、競争優位は得られません。
(2)SWOT分析
SWOT分析は、企業が自社の状況を把握し、効果的な戦略を立てるためのシンプルなフレームワークです。
SWOTは「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの要素を表しています。
この分析を通じて、企業は自社の内部環境と外部環境を整理し、今後の方針を決める参考にします。
1. Strengths(強み)
強みとは、他社よりも優れている点や、顧客から評価されている自社の特徴です。
例えば、優れた製品品質や、地域での長年の信頼関係、熟練したスタッフなどが挙げられます。
強みを理解することで、他社との差別化ポイントを明確にできます。
2. Weaknesses(弱み)
弱みは、他社に比べて劣っている点や、改善が必要な部分です。
例えば、資金力の不足や、技術の遅れ、人材の不足などが弱みとして挙げられるかもしれません。
弱みを把握することで、課題を明確にし、改善のための具体的な対策を考えることができます。
3. Opportunities(機会)
機会は、外部環境において企業が成長するために活用できる要素です。
市場の拡大、新しい顧客層の出現、法規制の緩和などが例です。
このような機会を最大限に利用することで、自社の強みを活かしながら成長のチャンスをつかむことができます。
4. Threats(脅威)
脅威は、外部環境からのリスクや障害です。
例えば、新規参入の競合企業、原材料の価格高騰、景気の後退などが挙げられます。
これらの脅威に対して、どのように対応するかを考えることが重要です。
4.ポイント2:人材採用チャネルの強化
中小企業が採用チャネルを強化することは、優秀な人材を確保し、企業の成長を支えるために非常に重要です。
採用チャネルとは、求人情報を求職者に届けるための手段や方法を指します。
求人広告の掲載といった従来の方法だけでは、優秀な人材にリーチすることが難しくなっています。
そのため、採用チャネルの多様化と強化が求められているのです。
求人広告を掲載するだけではなく、企業のホームページやSNSを活用することで、企業の魅力やビジョンを直接伝えることができます。
また、リファラル採用(社員紹介制度)を導入し、既存の社員から信頼できる人材を紹介してもらうことも効果的です。
さらに、採用イベントやインターンシップを通じて、企業と求職者が直接触れ合う機会を増やすことで、企業文化にマッチした人材を見つけやすくなります。
求職者にとっては、企業の実際の雰囲気を感じられるので、働くイメージを具体的に持つことができます。
このように採用チャネルを強化することで、より多くの優秀な人材にアプローチできるようになり、企業の成長を支える人材を確保しやすくなります。
ここでは簡単にできる採用チャネル強化の事例として、企業ホームページとSNSの活用について紹介します。
(1)企業のホームページの活用
<採用ページの充実>
企業のホームページに専用の採用ページを設け、求人情報だけでなく、企業のビジョンやミッション、企業文化、働く環境などを詳しく紹介します。
社員インタビューや働く様子の写真、動画を掲載することで、応募者に具体的なイメージを持ってもらうことができます。
応募を動機づけるページを作る戦略を公開中。実践的だから取り組みやすい解説書です。
<SEO対策>
採用ページを検索エンジンで上位表示させるために、適切なキーワードを盛り込み、見つけやすいページ作りを意識します。
求職者が自社の情報にアクセスしやすくなり、最適な人材にリーチする確率が高まります。
(2) SNSの活用
<企業のブランディング>
X(旧)Twitter、Instagram、Facebook、LinkedInなどのSNSを通じて、企業の日常やイベントの様子、社員の声などを発信します。
SNSの発信はリアルな働くイメージを作りやすい媒体です。
企業の雰囲気や価値観が求職者に伝わり、応募の動機付けにつながります。
<リーチの拡大>
SNSでは、フォロワーやそのネットワークを通じて、求人情報を広く拡散することができます。
特にLinkedInは、ビジネスネットワークを築く場として利用されており、専門性の高い人材にアプローチするのに適しています。
まだ日本では利用者が多いわけではありませんが、既に登録している利用者に対してはリーチしやすく、採用強化においては注目のSNSです。
<インタラクション>
SNSを通じて、求職者とのコミュニケーションを図り、質問やコメントに対応することで、応募者の関心を高めることができます。
求職者からの生の声を聞くことで、より採用につながる投稿にする改善の糸口も発見できるようになります。
また、SNS広告を利用して、特定のターゲット層に向けた求人情報を発信することも可能です。
5.ポイント3:財務状況の把握
財務状況を把握することは、企業の健全な経営を続けるために非常に重要です。
財務状況を把握することで、現在の経営状態を正確に理解し、適切な経営判断を下すことができるようになるからです。
適切な経営判断ができるようになれば、資金繰りの悪化や無駄な支出の発生を防ぎ、長期的な成長を支える基盤を築くことができます。
財務状況を把握する主な手法は以下の3点です。
(1)損益計算書(PL)をチェックする
損益計算書は、一定期間の売上と経費、そして利益や損失を示すものです。
損益計算書を定期的に確認することで、自社がどれだけ稼ぎ、どのくらいのコストをかけているかがわかります。
売上が高くても経費が多ければ利益は減るため、このバランスを見極めることが重要です。
(2)貸借対照表(BS)をチェックする
貸借対照表は、企業がどれだけの資産を持ち、どれだけの負債を抱えているかを示します。
貸借対照表を見ることで、自社がどれだけ安定しているか、つまり「健康な」財務状態かどうかがわかります。
資産と負債のバランスを理解することで、借入や投資の判断材料にもなります。
(3)キャッシュフロー計算書をチェックする
キャッシュフロー計算書は、お金の出入りを把握するためのものです。
いくら売上があっても、実際にお金が入ってこなければ、企業は資金繰りに困ります。
キャッシュフロー計算書を定期的に確認することで、現金の流れを理解し、資金不足や黒字倒産を防ぐことができます。
財務状況をしっかりと把握することは、企業の未来を守るための基本です。
簡単な指標を定期的に確認するだけでも、大きなリスクを避け、安定した経営を続ける手助けとなります。
財務に詳しくなくても、基本的な数字を理解し、信頼できる会計士やコンサルタントに相談することで、より確実な経営が可能になります。
6.まとめ
この記事では、不安定な時代を生き残るために中小企業経営者が注力すべきポイント3点について解説させていただきました。
これらは、どれも基礎的なものです。
しかし、意外と注力できていないものがどれか一つくらいはあるものです。
経営の改善は、派手な施策より基礎的なことをしっかりやり抜くことが効果的です。
不安定な時代を生き残るために凡事徹底し、少しずつ経営改善を行っていくことが重要なのです。
経営改善に関して不安がある場合は、中小企業診断士が個別相談を受付しておりますので、お気軽にチャコウェブまでご相談ください!