「今はオウンドメディアが大事ですよ」
このように言われてなんとなく検討するものの、イマイチ良さがわからない。
どうやって始めれば良いのかわからない。
そんな方は、ぜひ今回の記事を繰り返し読んで見てください。
これを読んでいる方は、普段どのように情報を手に入れているでしょうか。
テレビのニュースや新聞、雑誌などの従来型メディアに加え、インターネットを利用する人が圧倒的に増えています。
特にスマートフォンの普及により、時間や場所を選ばずに検索エンジンやSNSから必要な情報を探すのが当たり前の時代になりました。
ところが、広告費が全体的に高騰し始めていることをご存じでしょうか。
テレビCM、雑誌広告、インターネット広告など、どれもかつてよりも高額になり、費用対効果(かけた費用に見合った効果)が下がってきたと感じる企業も少なくありません。
特に、中小企業にとっては、限られた予算で大手企業と同じように広告を打つのは難しいのが現状でしょう。
参照:2022年 日本の広告費 – Knowledge & Data(ナレッジ&データ) – 電通ウェブサイト
そこで注目されているのが、自分の会社が自ら情報発信を行う「オウンドメディア」です。
オウンドメディアとは、自社が運営するウェブサイトやブログのようなもので、会社の製品・サービスに関する情報をはじめ、業界トレンドやノウハウなども積極的に発信していく媒体のことを指します。
広告に頼りきらずとも、お客さまに長期的に情報を届ける場を育てられるのが大きな魅力です。
今回は、オウンドメディアについて解説し、中小企業が集客や採用を底上げするお手伝いをいたします。
1.オウンドメディアは本当に効果があるの?
「そんなに効果があるの?」
このように疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、オウンドメディアで効果を上げている中小企業は実際に増えています。
検索エンジン経由でアクセスが増え、問い合わせや資料請求が増え、さらにそれが売上アップにつながった事例も少なくありません。
広告では一時的に目に留まるだけですが、自社のサイトに有益な情報が蓄積していけば、「いつでも誰でもアクセスしてもらえる看板」ができあがるのです。
特に今は、オンライン上での情報収集がさらに加速しています。
商談や営業活動をオンラインで行う機会も増えており、「オンライン上でどれだけ自社の存在感を高められるか」が企業の生き残りを左右する大きな要因になってきています。
ですから、中小企業こそ、自社の情報発信拠点をしっかり作り、時間をかけて育てていくことが今後の事業を安定させるうえでとても重要になります。
2.オウンドメディアについて知る
「オウンドメディア」という言葉は、英語のOwned Mediaが由来です。
Ownedとは「所有している」という意味で、つまり「会社が自分で持っているメディア」のことを指します。
ここでいうメディアとは、ウェブサイトやブログ、SNS公式アカウントなど、情報を配信できる場所全体のことです。
たとえば、次のように整理するとわかりやすいでしょう。
広告(ペイドメディア)
テレビCM、ネット広告、新聞広告など、お金を払って利用するメディア。
口コミ・SNS・マスコミ報道(アーンドメディア)
お客さまの口コミ投稿やSNSでの拡散、テレビや新聞が報道してくれるなど、企業がお金を払わなくても取り上げられるメディア。
自社が保有するメディア(オウンドメディア)
自社で運営するウェブサイトやブログ、YouTubeチャンネルなど。自由に情報発信ができる。
広告は一時的にアクセスや問い合わせを増やしてくれますが、お金を出し続けない限り効果が続かないという弱点があります。
また、口コミやマスコミ報道は多くの人に広まる可能性がある反面、自社でコントロールしづらいという面があります。
そこで「自社がコントロールでき、なおかつ積み上げていける拠点」として注目されるのがオウンドメディアです。
ただし、「ブログを書きまくればすぐに効果が出る」というわけではありません。
あくまで、必要な情報が整理され、読者の役に立つ質の高い記事が定期的に更新されることで、検索エンジンにも評価され、SNSなどでシェアされるようになります。
その結果として、アクセスが増え、自社の信頼度や問い合わせ数が高まる、という流れをイメージしましょう。
3.中小企業こそ必要な3つの理由
なぜ特に中小企業にとってオウンドメディアが重要なのでしょうか?
ここでは主に3つの理由を挙げます。
3-1.信頼づくり
大手企業であれば知名度があるため、多少広告を打てば「聞いたことがある名前だ」と思われるかもしれません。
しかし、中小企業の場合はまだ名前や事業が知られていないことがほとんど。
初めてウェブサイトを見てもらったときに「この会社は大丈夫かな?」という気持ちを向けられることが多々あります。
そこで、自社の専門知識や実績、スタッフの人柄がしっかり伝わる記事があると、「この会社なら信頼できそうだ」と感じてもらいやすくなるのです。
営業担当が口頭で説明するのと違い、ウェブ上の記事は何度も繰り返し読んでもらえますし、写真や動画を活用してわかりやすく伝えることも可能です。
3-2.集客コストの節約
広告を出す際には、お金がかかります。
テレビCMや新聞広告であれば数百万円、インターネット広告でも一定のクリックが発生するたびに費用が発生します。
これが長期的に続くと、中小企業の資金繰りにとっては大きな負担となるケースが多いでしょう。
一方、オウンドメディアは一度しっかり作ってしまえば、あとはランニングコスト(運営費)さえかければ継続できます。
もちろん、記事制作にかかる人件費や外注費用はあります。
しかし、広告のように「出稿をやめればアクセスがゼロに戻る」ということがありません。
良質な記事が蓄積されるほど、検索結果の上位に表示されやすくなり、アクセスが増える可能性が高まります。
3-3.採用・営業にも効く
意外かもしれませんが、オウンドメディアは採用活動や営業活動にも大きく貢献します。
例えば、採用の際に求職者が会社名を検索するとき、オウンドメディアがあると「どんな雰囲気の会社なのか」が伝わりやすく、応募のハードルを下げられるのです。
また、営業先の担当者が自社のことをネットで下調べする際にも、きちんと情報が整理された記事があれば「この企業は信頼できそうだ」と思ってもらいやすくなります。
こうした相乗効果によって、ただ売上を伸ばすだけでなく、社内外の認知度・信頼度をトータルで高められるのが、オウンドメディアの持つ強みです。
4. 成功事例
実際にオウンドメディアを活用して成果をあげている事例をご紹介します。
Webを通じて「情報発信を継続していく」ことで大きな成果につなげた好例です。
4-1.応募希望者3倍!ホームページリニューアルと同時にブログ発信を開始した大学院研究室
こちらの大学院研究室では、ホームページのリニューアルを通じて情報発信力を強化し、進学希望者が3倍に増加しました。
リニューアル後は、こまめに最新情報を発信しています。
研究内容や歴代教授の功績をわかりやすく公開することで、国内外からの連携も広がり、研究がより活性化しました。
5.実践前に立てておきたい、ゴールと途中目標の作り方
オウンドメディアを運営する際、ただやみくもに記事を書くのはお勧めしていません。
「最終ゴール」と「途中の目印」を設定しておくことが大切です。
英語では「KGI(Key Goal Indicator)」や「KPI(Key Performance Indicator)」と呼ばれますが、ここではもう少しわかりやすく、「会社として最終的に達成したい数字(最終ゴール)」と「そこに至るまで毎月チェックする数字(途中の目印)」と呼ぶことにします。
5-1.最終ゴール=会社として達成したい数字
たとえば、「年間で売上1億円を目指す」「新規顧客を30社獲得する」というように、経営判断として設定している大きな数字があるかと思います。
オウンドメディアは、そのゴールに向かうためのひとつの手段となります。
「問い合わせを増やし、見込み顧客を増やし、最終的に売上アップにつなげる」など、明確なイメージを持って運用しましょう。
5-2.途中の目印=毎月または毎週チェックする数字
最終ゴールが1年後や数年後だとすると、それまでの間に「今、どれくらい進んでいるか」を把握する指標が必要です。
以下のような数字を追いかけて、月1回や週1回で振り返るとよいでしょう。
- アクセス数(閲覧数):オウンドメディア全体で何ページ見られたか
- 訪問者数:何人のユーザーがサイトに来たか
- 問い合わせ数:問い合わせフォームの送信件数、資料請求数など
- SNSシェア数:SNS上で記事がどれだけシェアされたか
これらの指標が右肩上がりで伸びていれば、最終ゴールに近づいていると判断できます。
もし伸びていなければ、記事の内容を見直したり、発信頻度を増やしたりと、改善案を考えるきっかけになります。
「一喜一憂するためではなく、最終ゴールに向かうために現状について知る」意識を大切にします。
5-2-1.アクセス解析を導入しよう
これらを見るには、アクセス解析の導入が必要です。
Googleアナリティクスを設置するのが一般的ですが、自社が使いやすいと思うアクセス解析ならどれでも構いません。
解析システムの導入やレポート作成を自社で実施するのが難しい場合、外部に依頼しましょう。
長期的に自社で実施できるようにするなら、方法を教えてもらう依頼をしても良いと思います。
6.読者像づくりと記事テーマの出し方
オウンドメディアで最も重要と言えるのが、「誰に向けて書くか」「何を書くか」という記事の方向性です。
読み手がはっきりしていないと効果が薄れるからです。
そこで最初に「読者像」を具体的に設定し、次に「何を書くか」を決めていきましょう。
6-1.「誰に向けて書くか」読者像づくり(ペルソナ設定)
業界・属性:BtoB向けか、BtoC向けか
役職・年齢層:経営者なのか、担当者なのか、20代か40代か
よくある悩み:価格で比較するのか、機能重視か、納期を短縮したいのか
たとえば「建築業界で働く30代の設計担当者」をメイン読者像にして、「どんな悩みを抱えているか」を想像します。
すると、「工期短縮のノウハウを知りたい」「コスト見直しに役立つ情報が欲しい」といったアイデアが浮かんでき、記事の方向性が明確になります。
ペルソナ設計については、より詳しく解説している記事があります。
とても重要なので、ぜひそちらもご覧ください。
6-2.「何を書くか」記事テーマの出し方
読者像が決まったら、彼らが知りたい情報をリストアップします。
ヒントとしては以下の方法があります。
営業担当にヒアリング
「よく聞かれる質問は何か?」
「初回相談で不安に思われる点は?」
このように、実際のやり取りからテーマを探ります。
営業担当は実際の顧客の声を豊富に知っている人です。
ペルソナ設計につなげて、たくさんヒアリングしましょう。
検索キーワードの調査
Googleのサジェスト機能(検索ボックスに入力した時に出てくる関連ワード)を参考に、「どんな言葉で検索されているか」をみてみます。
「どんなことを調べているのか」
実態を把握する簡単な方法です。
競合他社のサイトを参考にする
どのような記事が人気を集めているのか、どんな切り口で情報をまとめているかを研究します。
注意していただきたいのは、そのままコピーペーストをするのではなく、あくまで参考にする点です。
7.制作体制を作り、作業の流れを決める
記事を作成する際に、内製(自社スタッフが書く)するか、外部に依頼するかを決める必要があります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、費用や人的リソースを考慮して選択しましょう。
「すべて内製」「すべて外部依頼」のように決めてしまわず、一部を外部に依頼する方法もありです。
そして、時期によって変更しても良いでしょう。
柔軟に対応し、とにかく継続しながら最終ゴールに向けて行動すること大事です。
7-1.内製するか、 外部に依頼するかを決める
内製のメリット
社内にノウハウが蓄積しやすいため、長期コストが下がります。
そして、社内スタッフのスキルも向上しやすくなります。
内製のデメリット
ライティングスキルのある人材が必要です。
担当者が他の業務と掛け持ちになると、更新が滞る可能性があります。
一見コストがかからないように見えますが、コストはかかっています。
目に見えない手間や追加業務による負担を考慮する必要があります。
外部依頼のメリット
プロのライターによる読みやすい文章や構成で、高品質な記事を作成できます。
更新ペースを安定させやすいため、オウンドメディアの確立ペースが早まります。
外部依頼のデメリット
コストがかかります。
社内の専門知識や独自ノウハウをうまくライターに伝えないと、内容が薄くなる可能性があるため、依頼先との連携が重要です。
7-1-1.外部依頼も、依頼できる範囲はさまざま
外部に依頼する場合でも、対応範囲はさまざまです。
丸投げですべてやってくれるサービスもあれば、特定の業務のみ請け負うサービスもあるからです。
- 決まったテーマに沿って記事を作成する
- コーディングをして投稿を行う
- 記事テーマを決めたり、長期的な戦略の設計を行う
自社で「発信」自体をしたことがなく、まったくゼロからのスタートの場合は、サポートが手厚いサービスから始めることを検討したほうが良いかもしれません。
ある程度社内にノウハウがある場合には、一部の業務を依頼するスタイルでも十分です。
7-2.社内ルールづくりとアクセシビリティ
記事のトーン(口調や文体)、写真や図表の使い方、社内チェックのフローなど、あらかじめルールを決めておくとスムーズです。
書き方のバラつきを減らすために「文章ガイドライン」を作っておくと良いでしょう。
また、アクセシビリティ(多様なユーザーが利用しやすいように配慮すること)も最近注目を集めています。
文字の大きさや色のコントラスト、画像の代替テキストなど、誰でも読みやすい記事を心がけることが重要です。
7-3.更新を楽にする仕組みを作る(ホームページ管理システムなど)
「ホームページ管理システム」とは、ウェブサイトを簡単に編集・更新できるシステムのことです。
WordPress(ワードプレス)などが代表的なものとして知られています。
HTMLやCSSなどの専門知識がなくても、管理画面からテキストや画像をアップロードして記事を公開できるので、社内の非エンジニアのスタッフでも運用しやすくなります。
こうしたシステムを導入して更新のハードルを下げることで、長期的に続けられる体制を作ることが大事です。
8.検索・SNS・メールで読まれる仕組み作り
せっかく良い記事を書いても、誰にも見てもらえなければ意味がありません。
読者を呼び込むための3つの基本的な方法を紹介します。
8-1.検索エンジンからの訪問を増やす
検索エンジン(Googleなど)で特定のキーワードを調べるときに、自社のオウンドメディアが上位に表示されるように工夫することを「検索エンジン対策(SEO)」といいます。
以下のようなポイントに気をつけると効果的です。
- 記事のタイトルや見出しに、読者が検索しそうな言葉を適切に含める
- 記事の内容を丁寧に書き、専門性や信頼性を高める(誤情報やコピペはNG)
- 外部サイトやSNSからリンクされるように、価値あるコンテンツを作る
8-2.SNSで記事を広める
会社の公式SNSアカウントやスタッフの個人アカウントを活用し、新しい記事が公開されたら案内を投稿しましょう。
また、読者がSNSでシェアしやすい仕組み(SNSボタンの設置など)も大切です。
自社のファンや地域コミュニティからのシェアが重なって、大きな拡散効果を生むことがあります。
中小企業のSNSアカウントについては、多数の記事で詳しく解説しています。
ブログ記事だけではなく、SNSも活用することで効果が増大しますので、ぜひSNSもはじめてみてください。
8-3.メールニュースで定期的に届ける
既に取引のあるお客さまやメルマガ会員に向けて、月1回や週1回の頻度で新着記事をお知らせするのも有効です。
特にBtoBの場合は、「自社のノウハウを定期的に案内し、情報を届ける」ことで顧客との関係を継続的に深められます。
メール本文に記事へのリンクを貼っておけば、そのままサイトに誘導できます。
9.よくある悩み Q&A
オウンドメディア運営で多くの企業がつまずくポイントと、その解決策をQ&A形式でまとめました。
Q1.更新が続かない
A1.テーマを事前に決め、月1回の編集会議を設定する
思いつきで記事を書き始めると「忙しくて更新できない」「ネタが切れた」となりがちです。
あらかじめ半年分くらいのテーマを考えておき、担当者同士で「今月はこれを書く」と決めると進めやすくなります。
さらに月1回「編集会議」を開いて進捗をチェックしましょう。
外部に依頼する場合、記事テーマを決めるサポートや分析もしてくれると安心です。
Q2.ネタ切れになる
A2.お客さまや現場の声をヒアリングしてネタを蓄える
実は、お客様の声はネタの宝庫です。
営業スタッフやサポート担当に「よく聞かれること」や「お客さまが困っていること」を聞いてみましょう。
また、取引先や顧客アンケートなどからも記事テーマを見つけられます。
自社の強みや専門知識を活かせるテーマを優先的に選ぶと、競合他社と差別化できます。
Q3.効果がわからず、やる気が続かない
A3.「早く見える数字」を見てモチベーションを保つ
売上や契約数の増加など、最終ゴールは時間がかかる場合があります。
そこで「アクセス数」「SNSシェア数」「問い合わせ件数」など、比較的早く変化があらわれやすい数字をモニタリングすると、成果を実感しやすくなります。
小さな成果でも積み重ねることで、長期的なモチベーションを維持できます。
たとえ小さな成果でも大きく喜んでよいのです。
一番大切なことは「続けること」。
続けやすい目標を設定しましょう。
10.まとめ
オウンドメディアの基礎から運営のコツまでを解説してきました。
オウンドメディアは、最初からすぐに大きな効果を得られるとは限りません。
しかし、更新と改善を地道に続ければ必ず何かしらの成果が得られます。
失敗と成功をくり返す中で、ユーザー(読者)の本音や自社の強みが明確になり、最終的には「広告に頼らずとも問い合わせが来る仕組み」を作ることが可能です。
もし「自分の会社の場合はどうしたらいいんだろう?」と疑問を感じたら、ぜひ専門家や詳しい人に相談してみてください。
最近は無料のウェブサイト診断や、初回無料コンサルティングを行うサービスも増えています。
そうした機会を活用すれば、具体的な改善ポイントが見えてくるはずです。
オウンドメディアは、小さな一歩からでも確実に成果へつなげられる自前のメディアです。
将来の安定した集客や信頼獲得のために、ぜひ前向きに取り組んでみてください。