「ホームページに載せる内容の決め方(1)」では、ホームページ全体の役割や、ページごとの目的、構成の考え方をお話ししました。
「ホームページに載せる内容の決め方(2)」では、スターターセットとして必ず用意しておきたいコンテンツを整理しました。
今回の「(3)」は、その続きです。
これまでに決めたことを、「コンテンツ設計」に落とし込んでいきます。
具体的には、とある保育園のホームページリニューアル事例を参考にしながら、スターターセットのコンテンツをどう並べたのか、保護者の方の動きをどうイメージしたのかを見ていきます。
保育園の例ですが、流れ自体は製造業や運送業、サービス業などあらゆる業界にもそのまま応用できます。
読み進めながら、「自社の場合なら、ここはこう置き換えられそうだな」とイメージしてもらえたらうれしいです。
1.コンテンツ設計とは何か
コンテンツ設計という言葉は「少し抽象的でよくわからないな」と感じられるかもしれません。
ここでは、次のような流れで考えています。
(1)構成編で決めたこと
ホームページの目的、ページごとの役割、全体の導線
(2)コンテンツ編で決めたこと
どんな内容をスターターセットとして載せるか
(3)コンテンツ設計編で決めること
それらの内容を、どのページに、どの順番で、どうつなぐか
つまりコンテンツ設計とは、これまでに洗い出した「載せたいこと」を、サイトマップという形に整理していく作業だと考えられます。
箱を決めるのが構成とすると、中身の材料を集めるのがコンテンツ選びです。
材料を箱にきれいに入れて、全体のバランスを整えるのがコンテンツ設計です。
1-1.コンテンツ設計で決めることとは
コンテンツ設計で決めることを、もう少し具体的に書いてみます。
決めたいのは主に次の3つです。
- どの内容を、どのページでまとめて見せるか
- そのページ同士を、どの順番でたどれるようにするか
- スマホで見た時に、上からどのような順番で情報が現れるか
例えば、保育園であれば、保護者の方は最初に「園の雰囲気」や「保育方針」が気になるとします。
次に「園での1日の流れ」や「年間行事」「費用」などを確認して、「見学してみようかどうか」を判断するのではないでしょうか。
この流れを踏まえると、以下のような形でページやコンテンツの位置を決めていくことができます。
- トップページの上のほうに、園の雰囲気と方針が分かる情報を置く
- そこから「園の紹介」「園での生活」「入園案内」などのページへ自然につなぐ
- 最後に「見学・お問い合わせ」への導線を分かりやすく置いておく
上記の流れを見てわかる通り、コンテンツ設計は会社側の都合だけでページを並べるのではありません。
お客様の動きや不安になりやすいポイント、最終的に取ってほしい行動を踏まえて「案内図」を作るイメージを持ちましょう。
2.コンテンツ設計の基本ステップ
ここからは、コンテンツ設計の進め方を、4つのステップに分けて整理していきます。
2-1.ステップ1:スターターセットを並べる
最初のステップは、「ホームページに必ず載せたいコンテンツ、内容の決め方(2)」で決めたスターターセットを書き出していきます。
紙やホワイトボードでも、オンラインのツールでも構いません。
例えば、次のようなものが並ぶはずです。
- 事業案内やサービス紹介
- 会社概要や園の概要
- アクセス
- 料金や費用の目安
- 事例やお客様の声
- よくある質問
- お問い合わせや見学申し込み
この段階では、まだ順番を気にしなくて大丈夫です。
「今の自社サイトに載せるなら、このあたりは外せない」というものを、一度外に出してみましょう。
2-2.ステップ2:役割ごとにグループに分ける
次のステップでは、書き出したコンテンツを「役割ごと」にグループに分けていきます。
例えば、次のようなグループに分けられます。
信頼の土台になる情報
会社概要、園の概要、沿革、許認可、所在地など
サービスを理解してもらう情報
事業案内、サービス紹介、園の1日、年間行事、設備の紹介など
不安を減らすための情報
よくある質問、料金、ルール、サポート内容など
行動を後押しする情報
お問い合わせ、見学申し込み、資料請求、予約など
付箋などに書き出している場合は、テーブルの上で少しずつ近いもの同士を寄せていきます。
この作業だけでも、「信頼の情報が少ないな」「サービス説明はあるけれど、不安を減らす情報が足りないな」といった気づきが生まれます。
2-3.ステップ3:ユーザーの動きをイメージする
役割ごとにグループ分けができたら、次はユーザーの動きをイメージしてみます。
ここでは、代表的なユーザー像を1人だけ決めるところから始めましょう。
保育園なら、園児の保護者。
製造業なら、発注を検討している担当者。
運送業やロードサービスなら、物流や車両管理の担当者、といった具合です。
その人が、ホームページにたどり着いてから問い合わせや見学申し込みに至るまでの流れを、1本の線で描いてみます。
例えば、保育園の場合は、次のような流れが考えられます。
- 検索や口コミ、自治体の情報からホームページに来る
- トップページで雰囲気や方針をざっくり掴む
- 園の紹介ページで理念や特徴を読む
- 園での生活のページで、1日の流れや年間行事を確認する
- 保護者の声や写真を見て、具体的なイメージを持つ
- 入園案内や募集要項で費用や募集状況を確認する
- 見学申し込みフォームから問い合わせる
このような流れを紙に書き出してみると、「どのタイミングで、どのコンテンツを見てもらいたいか」がはっきりしてきます。
2-4.ステップ4:サイトマップの形に整理する
最後に、ここまでの情報をサイトマップという形に整理していきます。
サイトマップは、本の目次のようなものです。
トップページの直下にどのページを置くか、その下にどんなページがぶら下がるかを、階層構造で表現します。
例えば、保育園であれば、次のようなイメージになります。
- トップ
- 園の紹介
- 園での生活
- 園の様子(写真ギャラリーなど)
- 入園案内
- 園について(概要・沿革・アクセスなど)
- お知らせ・ブログ
- お問い合わせ・見学申し込み
この一覧ができると、「どこから見ても、次にどこへ進めばいいか」が運営側にも分かりやすくなります。
あとは、実際のページづくりの中で、メニューの名前や順番を微調整していけば大丈夫です。
3.具体例:保育園ホームページのコンテンツ設計
ここから、とある保育園のホームページリニューアル事例を通じて、これらのステップが実際にどう使われたのかを見ていきます。
3-1.リニューアル前のホームページが抱えていた課題を見える化する
ここでは、チャコウェブでお手伝いした保育園のホームページリニューアルを例に、コンテンツ設計の流れをたどってみます。
地域に根ざした認可保育園で、0歳児からの受け入れを行っている園です。
リニューアル前のホームページは、いわゆる「必要最低限の情報だけが載っている状態」でした。
- 園の住所や連絡先
- 開園時間や休園日
- 園の概要を数行でまとめた文章
基本的な情報はありましたが、写真は少なく、ブログの更新も止まっていました。
保護者の目線で見た時には、次のようなところが分かりづらい状態です。
- 園児たちが日々どのように過ごしているのか
- 園の考え方や保育方針
- 先生たちの雰囲気や、人となり
- 園の周辺環境や、安全面への配慮
つまり、「入園する前に知っておきたいこと」がホームページからはあまり伝わっていなかったのです。
園としては長年地域に根ざして運営しており、信頼も実績も積み重ねていました。
それでも、初めてホームページを見た人にとっては、その価値が十分に伝わっていない状態だったと言えます。
3-2.園と保護者、それぞれのゴールを整理する
リニューアルの最初のステップでは、園側と保護者側、それぞれのゴールを整理しました。
園側のゴールは次の2つでした。
- 見学や入園に関する問い合わせを、無理なく増やしていきたい
- 保護者に安心して園児を預けてもらいたい
一方の保護者側は、ホームページに来た時に次のようなことを知りたいと考えられます。
- 自分の子どもに合いそうな園かどうか
- 園の雰囲気や先生の人柄
- 園での1日の流れや、年間行事
- 保育料や募集状況など、基本的な条件
こうして並べてみると、両者のゴールは大きくズレていません。
違いがあるとすれば、園側は「長く通ってほしい」という時間軸を持っており、保護者側は「まずは1歩目として安心して見学に行けるかどうか」を気にしている、という点です。
コンテンツ設計では、この2つのゴールを結ぶようにサイトマップを組み立てていきます。
3-3.コンテンツのスターターセットを選ぶ
次に、園のホームページに必要なスターターセットのコンテンツを整理しました。
具体的には、次のような内容です。
- 園の理念や保育方針
- 園の概要(所在地、定員、対象年齢、開園時間など)
- 園での1日の流れ
- 年間行事やイベント
- 園内や園庭、周辺環境の写真
- 給食やおやつ、安全面の取り組み
- 保護者の声
- 入園案内(募集状況、費用、申し込みの流れ)
- お知らせ・ブログ
- 見学や問い合わせの窓口
これらを、先ほどのステップ2でお話しした役割ごとに分けていきます。
信頼の土台になる情報として、園概要や理念、安全面の取り組み。
園での生活や行事、写真などは、サービスを理解してもらうための情報です。
入園案内や募集状況は、不安解消と行動を後押しするコンテンツにあたります。
この段階で、「ここが弱いと保護者が不安になりそう」というポイントが見えてきたので、特に園での生活や写真、入園案内の情報量を厚めにする方針が決まりました。
3-4.ホームページと他の媒体をつなげる
ホームページだけでなく、他の媒体との連携も意識しています。
- ホームページから園のSNSや自治体の情報ページへのリンクを設置する
- 見学案内やパンフレットにホームページのURLやQRコードを掲載する
- 同じ写真や文章を、ホームページと印刷物で共有する
こうすることで、保護者の方が検索からホームページを見たり、SNSで発見したり、自治体または見学時にパンフレットを手にしてからもさまざまな媒体で縁の情報を見て、より理解を深められるようになります。
コンテンツ設計は、ホームページの中だけで完結する話ではありません。
ホームページを「信頼と案内の中心」として位置づけ、そこから周辺の媒体へ視線をつなげていくイメージを持つと、全体としてブレにくくなります。
4.BtoBホームページのコンテンツ設計のポイント
ここまで保育園の例で見てきましたが、製造業や運送業、ロードサービス、産業廃棄物処理業などのBtoBサイトでも、コンテンツ設計の考え方は同じです。
違うのは、ホームページを見ている人の立場と、確認したい情報の種類です。
BtoBの場合、ホームページを見る人は、取引先候補の担当者や、総務・購買の担当者、経営者であることが多くなります。
この人たちは、次のようなことを知りたいと考えます。
- どんな業務をやっている会社なのか
- どのエリアまで対応しているのか
- どの程度の設備や車両を保有しているのか
- 安全や品質にどのように取り組んでいるのか
- 許認可や資格は整っているのか
そのため、BtoBホームページでは、事業の中身や体制が一目でわかる構成が大切になります。
4-1.BtoBで見られやすいコンテンツ
BtoBのコンテンツ設計では、次のようなページが重要な役割を持ちます。
- 事業案内やサービス紹介
- 対応エリアや対応業種
- 保有設備や保有車両
- 許認可や資格、登録情報
- 安全・品質への取り組み
- 主要取引先や実績(書ける範囲で)
- 会社概要と拠点情報
- お問い合わせや見積もり依頼
例えば、運送業なら、事業案内だけではなく、保有車両の種類や台数、対応エリア、安全面の取り組みまで含めて1つのまとまりとして見せたいところです。
産業廃棄物処理業であれば、許可番号や対応可能な品目、処理施設の情報が、問い合わせ前に確認しておきたい情報になります。
これらは「載せておいた方がよさそうなもの」ではなく、「見られている前提で設計すべきもの」と考えたほうが、コンテンツの優先順位を決めやすくなります。
4-2.BtoBサイトマップの基本パターン
BtoBのサイトマップは、特別なことをしなくても、基本を押さえるだけでかなり伝わりやすくなります。
例えば、次のような構成です。
- トップ
- 事業案内への導線
- 強みや特徴のダイジェスト
- 保有設備・車両や対応エリアへの導線
- 安全・品質への取り組みへの導線
- 事例や実績への導線
- お問い合わせや見積もり依頼ボタン
- 事業案内
- 保有設備や保有車両
- 対応エリア
- 安全・品質への取り組み
- 許認可や資格
- 事例や実績
- 会社概要・拠点情報
- お問い合わせ・見積もり依頼
トップページには、相手企業が知りたい情報への入口を集めます。
詳細はそれぞれのページで説明し、必要であればPDFの資料などで補うイメージです。
ここで着目したいのは、特に奇をてらったコンテンツにする必要はない点です。
まずは基本を押さえることを最優先にしたほうが喜ばれるホームページになります。
もし「独自コンテンツを生み出さなければ」と焦る気持ちがあるなら、そんなことはないのでご安心ください。
事業やサービスの強みや独自性、差別化できる点をホームページで伝えることが優先です。
独自コンテンツは、後から作っても遅くありません。
5.まとめ
コンテンツ設計という言葉だけ聞くと、難しく感じるかもしれません。
しかし、実際にやることは次の3つに整理できます。
- どんなコンテンツをスターターセットとして用意するかを決めること
- それぞれのコンテンツが、信頼・理解・不安解消・行動のどの役割を持つかを整理すること
- ユーザーの知りたいことや動きに合わせて、ページ構成とサイトマップに落とし込むこと
保育園の事例のように、一度構成を見直すだけでも、ホームページの印象や、問い合わせまでの流れは大きく変わります。
製造業や運送業、ロードサービス、産業廃棄物処理業などのBtoBでも、考え方は同じです。
全部を一度に完璧にする必要はありません。
まずは、自社のスターターセットとラフなサイトマップを描いてみましょう。
ホームページを、ただの会社案内ではなく、事業の成長を支える案内図にしていきましょう。