ウェブアクセシビリティという言葉を知っていますか?
「初めて聞いた」「なんとなく聞いたことはあるけど詳しくは知らない」という人がほとんどなのではないでしょうか?
日本ではまだまだ認知度が低いウェブアクセシビリティですが、今後需要が高まっていくと予想されています。
この記事では、ウェブアクセシビリティについて解説していきます。
ウェブアクセシビリティとは?
そもそもアクセシビリティとは、あるものを状況、環境に関わらずありとあらゆる人が利用することができるようにする取り組みのことです。
そしてウェブアクセシビリティとは、それをウェブで実現すること、つまりウェブコンテンツを誰にとっても使いやすくするための配慮や取り組みのことです。
よくある誤解として「障がい者への配慮=ウェブアクセシビリティ」というものがありますが、これは正確ではありません。
ウェブコンテンツを利用する人々には、障がいの有無だけでなく、年齢、性別、居住地域、デバイスの違いなど様々な状況、環境の違いがあることが想定されます。
そのどんな場合においても、ユーザーがウェブコンテンツを利用できるように工夫することがウェブアクセシビリティなのです。
アクセシビリティとユーザビリティは何が違うの?
アクセシビリティの他にユーザビリティという言葉があります。
もしかしたらユーザビリティの方が聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか?
この二つは言葉も考え方も似ていますが、異なる部分もあります。
ユーザビリティは「使いやすさ」を示す言葉
ユーザビリティは「使いやすさ」を示す言葉です。
「対象ユーザー層にとってそのコンテンツはどれくらい使いやすいか」「対象ユーザー層にとってより使いやすくするにはどうしたらよいか」という考え方をもとにしています。
アクセシビリティは「使うことができるかどうか」を示す言葉
一方で、アクセシビリティは状況、環境に関わらずありとあらゆる人が利用(アクセス)することができるかどうか、という前提があります。
まず「使うことができる状況」を満たした上で、より使いやすく改善していくのです。
なぜこのような考えなのかというと、「障がい者」「高齢者」など特定の状況下では、そもそも利用自体ができない場合が多くあるからなのです。
ウェブコンテンツにおける利用できない状況の一例
・聴覚障がいがあるため、動画に字幕がないと内容が分からない
・老眼で小さい字を読むことが難しいため、拡大できないように設定されているホームページは文章を読むことができない
・ケガや病気、老いなどが原因で手の震えがあるためマウスがうまく扱えないが、チェックボックスが非常に小さくチェックをすることが困難
こういった状況を改善し、まず利用できる状況を確保したうえで、より使いやすく改善していくことがアクセシビリティなのです。
アクセシビリティとユーザビリティの関係
まとめると
ユーザビリティ…対象ユーザーにとってどれくらい「使いやすいか」
アクセシビリティ…あらゆるユーザーがどれくらい「利用可能か」、そして利用可能なことを前提としたうえでどれくらい「使いやすいか」
となります。
ただ、アクセシビリティとユーザビリティに明確な線引きはありません。
アクセシビリティを高めればユーザビリティもおのずと上がっていくものだと考えられており、最終的に大切なのは「誰にとっても使いやすい状況を目指すこと」なのです。
チャコウェブのウェブアクセシビリティ方針を公開しています。
義務化って本当?
これまでウェブアクセシビリティは国や自治体で積極的に取り組まれていたものの、民間企業での取り組みはそれほど進んでいませんでした。
そんな中、最近になって「ウェブアクセシビリティが義務化するらしい」というお話をよく聞くようになっています。
結論から言うと、ウェブアクセシビリティ対応は今のところ義務化されていません。
義務化される予定も特に決まっていません。
それでは、どうしてこのような話題が出るようになったのでしょうか?
それはある法律の改正によります。
障害者差別解消法の紹介
障害者差別解消法は「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進すること」を目的として、2013年に制定されました。
そして、2021年にこの法律の改正が行われました。
改正法の内容に、民間企業の合理的配慮提供が努力義務から義務に変更されるという部分があり、これが元になって「ウェブアクセシビリティ対応が義務化する!」と言われ始めたようです。
実際のところウェブアクセシビリティ対応は「合理的配慮」ではなく「環境の整備」というものに位置付けられているため、法改正後は「努力義務」となります。
改正前の「環境の整備」の扱いは「実施に努める」だったので、一段階進んだ内容になったことは間違いないでしょう。
どんな対応が必要か
ウェブアクセシビリティにはいくつかレベルがあり、目指すレベルにより求められる対応は様々です。
ここでは基本的な対応の中からほんの一例を紹介します。
- 動画には字幕を付ける
- フォームやボタンなどをキーボードで操作できるようにする
- 読み上げソフトとの互換性を確保する
- 画像などの視覚情報は、視覚以外からも情報を得られるように代替手段を用意する
- 誰が見ても分かりやすいように情報を整理して掲載する
これらの対応を個人で行うことは非常に困難です。
ホームページの制作時やリニューアル時などに、制作会社とよく相談したうえで対応していく必要があるでしょう。
対応しないとどうなる?
法的義務ではなく努力義務なので、すぐに対応しなかったからといって罰則を受けるわけではありません。
ですが、なるべく早く対応を始める必要があるとチャコウェブでは考えています。
その理由の一つとして、アメリカやヨーロッパではすでに「その人の状況に関わらず誰もが同じ情報に触れられるということは守られるべき権利である」という考え方が浸透しはじめています。
つまり、ウェブにアクセスできることは人権の一つだと考えられているのです。
実際にアメリカでは「ウェブアクセシビリティに配慮していなかった」という理由から訴訟に至る事案が多発しており、ウェブサイト運営側が敗訴しているケースもあります。
日本国内でもいずれ「情報に触れられることは当たり前の権利であり、侵害してはいけない」という考え方が主流になってくることが考えられます。
今のうちから意識を高め、対応を行うことが必要なのです。
お役立ち資料 ホームページ作成からマーケティングのことまでよく分かる
みんなが使いやすいホームページを作るために取り組んでいること
制作段階からきちんと考えた方が良い理由
ウェブアクセシビリティを実現するためには、制作段階からきちんと仕様を決めて設計することが必要です。
ウェブサイト制作においては、デザインやコンテンツの内容が重視され、ウェブアクセシビリティが後回しにされることがよくあります。
しかし、後からウェブアクセシビリティを改善することは非常に困難であり、コストもかかります。そのため、最初からウェブアクセシビリティを意識した設計を行うことが重要です。
制作会社と打ち合わせを行う際、デザインやコンテンツの内容だけでなく、そのウェブサイトをウェブアクセシビリティに対応させるのか、させるとすればどのくらいのレベルを求めるのかなどもしっかり相談しておくことをお勧めします。
まとめ
ウェブアクセシビリティの基本についてご紹介しました。
現在は努力義務にとどまっていますが、いずれウェブアクセシビリティに対応したウェブサイトが主流となっていくでしょう。
ウェブアクセシビリティを意識して制作に取り組むことができれば、あらゆる人にとって利用しやすいウェブサイトにすることができます。
ホームページの新規制作やリニューアルを考えている方は、この機会にぜひウェブアクセシビリティ対応についても考えてみてはいかがでしょうか?