アクセシビリティ重視のウェブ制作

チャコウェブ

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GAAD JAPAN 2024 参加レポート① はじめてのアクセシビリティ〜みんなでやれば怖くない〜(中村祐貴子さん/カラビナテクノロジー株式会社)

GAAD JAPAN 2024 参加レポート① はじめてのアクセシビリティ〜みんなでやれば怖くない〜(中村祐貴子さん/カラビナテクノロジー株式会社)

みなさんはGAADを知っていますか?
GAADとはGlobal Accessibility Awareness Dayの略です。
毎年5月の第3木曜日はGAADの日となっていて、世界各地でデジタルアクセシビリティを考える1日とされています。

日本では今年のGAADにあわせてGAAD JAPAN 2024というオンラインセミナーが開催されました。
9時45分〜19時までの間にさまざまな登壇者のお話を聞くことができる、大変ボリュームのある催しです。

GAAD JAPAN公式サイト

そんなGAAD JAPAN 2024に参加してきましたので、今回の記事では中村祐貴子さん(カラビナテクノロジー株式会社)のセッション「はじめてのアクセシビリティ〜みんなでやれば怖くない〜」についてご紹介します。

このセッションでは、アクセシビリティの基礎や重要性、合理的配慮の提供と環境の整備の違いについてなどの解説があり、具体的な対応をケーススタディを通して学ぶことができました。

参加した中で、私自身が感じたことや考えたことも合わせてご紹介します。

 

診断からはじめる無理のないウェブアクセシビリティ対応

 

1.「障害者」という表記

セッションの冒頭に中村さんより、セッション内で「障害者」という表記を使用することについての案内がありました。
中村さん自身の考えとして述べられていた内容は後ほどご紹介します。

 

1-1.表記と考え方

中村さんの考えをご紹介する前に、前提として「しょうがいしゃ」の表記については世の中でさまざまな議論があることをお伝えしたいと思います。

それは、「しょうがいしゃ」について「どういった立場からどのような表記を使用するか」を明確に表明している自治体や法人があることからも見て取れるのではないでしょうか。

 

1-1-1.「しょうがいしゃ」の表記について明記している自治体や法人

ここで紹介しているのは一部に過ぎません。
下記以外にも「しょうがいしゃ」の表記について明記している自治体や法人はたくさん存在しています。

 

1-1-2.よくある表記について

よくある表記として、「障害者」「障がい者」「障碍者」などがあります。
それぞれ賛成意見・反対意見があり、どの表記が適当かという議論は現在も続いています。

障害者
法律や制度の名称などで広く使われているため、理解しやすく普及していると考えられています。
しかし、この表記には差別的なニュアンスやネガティブなイメージが含まれていると感じる人もいます。
特に「害」という字には「わざわい」といった意味があり、当事者に対してマイナスの印象を与えることが指摘されています。

障がい者
「障害」の「害」をひらがなに置き換えることで、ネガティブな意味合いをやわらげる狙いがある表記です。
現在、一部の自治体や法人で採用されています。
一方で、漢字をひらがなにすることで言葉の本来の意味が曖昧になり、障害への認識や理解が浅くなるという意見もあります。

障碍者
「碍」という字は「かべ」「さまたげ」を意味することから、一部ではこちらの方が意味として正しいと指摘されています。
また、中国などの漢字を使う国では「障碍」と表記されるうえ、日本でも昔はこの表記が使われていたことから、こちらの方が適切だという意見があります。
問題点としては、「碍」という漢字は使用頻度が低く、現代ではなじみがない人が多いことが挙げられます。

 

1-2.中村さんの考え

上記を前提とした上で、中村さんのお話をご紹介します。

アクセシビリティに取り組んでいくにあたって、障害や不利益・困難の原因は障害のない人を前提に作られた社会の作りや仕組みに原因があるとする「障害の社会モデル」という捉え方で取り組むことが大切だと感じています。

と述べました。
そして、「社会的に障害のある人」の存在を認識して「社会的なバリア」を解消するのが「社会の責務である」という考えをもとに、漢字で「障害者」と表記するとのことでした。

 

1-3.医学モデルと社会モデル

中村さんのお話の中に出てきた「社会モデル」という言葉を、聞いたことはあるでしょうか?
「障害」というものを考えるにあたって、「医学モデル」と「社会モデル」という2つの考え方があります。

 

1-3-1.医学モデルとは

障害を個人の身体的・精神的な機能不全として考えるモデルです。
治療、リハビリ、薬物療法などで機能を改善することを目標としています。
医学モデルという名前の通り、医師や看護師、理学療法士などの介入によるアプローチを行うことが多く、基本的に障害は個人の問題と捉えられます。
適切な治療を行うために必須の視点ではありますが、社会的要因や環境要因が軽視されてしまうことが懸念されます。

 

1-3-2.社会モデルとは

障害を個人の身体的・精神的な状態だけでなく、社会的・環境的な要因によるものとして考えるモデルです。
障害は社会的な問題だと捉え、法律の制定や社会的な意識の向上など社会全体での取り組みによるアプローチが行われます。
この考え方が生まれたのは比較的最近で、広まったのは1980年代だと言われています。

 

2.障害者差別解消法

続いて、中村さんよりアクセシビリティの基本に関する説明がありました。
その中で、日本でアクセシビリティへの注目が高まっている背景として、障害者差別解消法の改正と施行が関係しているとのお話がありました。
また、合理的配慮の提供と環境の整備についても触れられました。

 

2-1.合理的配慮の提供と環境の整備の違い

合理的配慮の提供については以下のような説明と参考リンクが提示されました。

合理的配慮の提供とは
内閣府作成のリーフレットでは下記のように説明されています。
①行政機関等と事業者が、
②その事務・事業を行うに当たり、
③個々の場面で、障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に
④その実施に伴う負担が過重でないときに
⑤社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること
参考:内閣府のリーフレット

環境の整備については以下のような説明と参考リンクが提示されました。

不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前の改善措置(公共施設や交通機関のバリアフリー化、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)を「環境の整備」として実施を努力義務にしています。
合理的配慮の提供は個々の障害者との対話や対応が前提ですが、環境の整備は不特定多数の障害者を主な対象として、あらかじめ準備する対策といえます。
政府の基本方針では、環境の整備として、ハード面の対応だけでなく、ソフト面の対応(従業員に対する研修を行うこと等)も重要であると強調されています。
参考:障害者差別解消法で義務化される合理的配慮とは? – BUSINESS LAWYERS

まとめると、合理的配慮とは個々の状況に応じて提供される特定の対応を指します。
例えば、普段は予約フォームから予約を受け付けているが、障害によりフォームの利用が困難な場合は電話予約に対応することなどが挙げられます。

一方、環境の整備とは不特定多数の障害者を対象に行う事前の改善措置を指します。
例えば、予約フォームをキーボードで操作をできるようにする、エラーメッセージが分かりやすいよう色の使い方を工夫する、テキストリーダーにフォームの状況が正しく伝わるように設計するなどし、ウェブアクセシビリティを向上させることなどがあります。

次に、合理的配慮の提供と環境の整備に関するケーススタディが行われました。
そちらが大変分かりやすかったのでご紹介します。

 

3.合理的配慮と環境の整備に関するケーススタディ

中村さんより、ケーススタディとして次のような例が提示されました。

田中さんはレストランをウェブサイトで予約しようとしている。
しかし、ウェブサイトがキーボード操作に対応しておらず、マウスで一部操作を行う必要があった。
手に障害がある田中さんはマウスを上手く操作することができず、予約を完了できなかった。
田中さんからレストランに電話があった。
障害者差別解消法に沿って合理的配慮の提供を求められた場合、どのような対応が考えられるか?

考えられる対応としては、以下の4つが挙げられます。

  • 電話予約を受け付ける
  • キーボード操作で受け付けできるウェブサイトに改修する
  • マウス操作ができる人に予約をしてもらうよう田中さんにお願いする
  • 現在のウェブサイトでの予約しか受け付けない

それぞれの対応についての中村さんの解説は以下です。

 

3-1.電話予約を受け付ける

合理的配慮の提供ができていると言える。
レストラン側の負担が少なく、田中さんもすぐに予約できる。

 

3-2.キーボード操作で受け付けできるウェブサイトに改修する

合理的配慮の観点で考えると△。
すぐにウェブサイトを改修できれば合理的配慮の提供ができていると言えるが、時間や費用がかかりレストラン側の負担が大きい。
また、田中さんが予約したい日までに間に合わない可能性がある。
田中さん以外にも同様の理由で困っている人から連絡が来る可能性がある。
そのため、ウェブサイトの改修は環境の整備として中長期的に対応することを検討したい。

 

3-3.マウス操作ができる人に予約をしてもらうよう田中さんにお願いする

障害を理由とした取り扱いとして正当な理由がなく、不当な差別的取り扱いと言える。
田中さんが求めているタイミングで予約できる保証がなく、合理的配慮の提供ができていない。

 

3-4.現在のウェブサイトでの予約しか受け付けない

田中さんと対話しておらず、不当な差別的取り扱いと言える。
田中さんが予約できないので、合理的配慮の提供ができていない。

 

4.セッションに参加して感じたこと

まず、冒頭の「障害」という表記についての案内は「障害」というものの捉え方を改めて考えるきっかけとなりました。

医学モデルと社会モデルはどちらが正しい、どちらが間違っているというようなものではありません。
医学側の視点・社会側の視点という別の視点から見た2つの概念を組み合わせることで、より障害というものへの理解を深めることができます。

ただ、アクセシビリティに取り組む場合は社会モデルの視点が重要となります。
ですから、中村さんの「社会的に障害のある人の存在を認識して、社会的なバリアを解消するのが社会の責務である」というお話はとても印象的でした。

チャコウェブではこれまで「障がい」という表記を使用してきました。
それは「障害」という表記を使うことでネガティブな印象を抱いてしまう方がいるのではないか、という懸念からです。

ですが、今回のお話を聞いて「障害はあくまでも社会にある」ということを前提にアクセシビリティに取り組むのであれば、「障害」という表記を使用することは悪いことではないと感じました。

「障がい」という表記を繰り返し使用すると、どうしても文章が冗長になってしまいます。
すると、読みにくいといった別の問題も出てきます。

そういったことからも、今後「障害」という表記を使用することを検討したいと思います。

また、合理的配慮の提供と環境の整備の違いについての説明も非常に分かりやすく、勉強になりました。
特に、ケーススタディは具体的な状況と対応方法から「どういった対応が合理的配慮の提供になるか」「環境の整備とはどのようなものか」を学ぶことができました。

セッションの最後に中村さんは、
「自分の周りにアクセシビリティ対応が求められるかもしれないものがあるか探してみよう」
「短期、中長期で何ができるかを考えてみよう」
「最初から100点を目指すのではなく、1点でもプラスにするという気持ちで、オンラインでもリアルでもアクセシビリティを高めていこう」
とおっしゃっていました。

私自身、今後も「少しずつでも進めていく」という気持ちを持ってウェブアクセシビリティに取り組んでいきたいと思います!

お役立ち資料 ホームページ作成からマーケティングのことまでよく分かる
チャコウェブが考えるウェブアクセシビリティ
みんなが使いやすいホームページを作るために取り組んでいること

 

5.まとめ

GAAD JAPAN 2024より、中村祐貴子さん(カラビナテクノロジー株式会社)のセッション「はじめてのアクセシビリティ〜みんなでやれば怖くない〜」についてご紹介しました。

次回も、引き続きGAAD JAPAN 2024についてまとめていく予定です!
まだまだたくさんのセッションに参加させていただきましたので、次回以降の記事もお楽しみに!


          この記事を書いた人        
山口 ウェブアクセシビリティマネージャー
株式会社Cyber Cats ウェブアクセシビリティマネージャー。
コーダー、ディレクターを経験する中で「使いやすいホームページ」の重要性を強く感じ、ウェブアクセシビリティ向上に取り組み始めました。
最初は個人的に行っていた活動でしたが、少しずつチームに広がり、現在は組織全体の活動となっています。
自社ホームページのウェブアクセシビリティ監修の他、社内勉強会を開いてメンバーへの情報共有や意見交換を行っています。
また、ウェブアクセシビリティをテーマにブログ執筆を行っており、基本原則の解説や自社ホームページを例に挙げて改善例の紹介などを行っています。
最近はアクセシビリティに関わる施設への取材も開始し、そこで得た経験からウェブアクセシビリティを考える活動を行っています。
詳しいプロフィールはこちらから
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