情報発信についての認識、間違っていませんか?
「SNSは若い子が空いた時間にやるもの」
「ブログは暇な人の自己満足」
「動画なんてバズらなければ意味がない」
ブログでの情報発信、SNSでの企業公式アカウントを作成しての発信について話していると、経営者からこんな声を聞くことがあります。
正直、SNSは中小企業でも当たり前の時代。
競争はどんどん激化しています。
このような状況にもかかわらず、企業側の認識がいつまでも「空いた時間にやるもの」では、成功にはなかなか結びつきません。
新規顧客の情報収集行動は10年前とは比べものにならないほどデジタルシフトしました。
ウェブ上で企業の一次情報が見当たらない、あるいは更新停止が続いていると、どれほど魅力的な製品・サービスでも検討テーブルにすら乗りません。
私は、この企業側と社会動向とのギャップに危機感を覚えています。
「集客できない」
「採用に困っている」
このように悩んでいるのに、解決の糸口となるネット上の情報発信に対して甘い考え方をしている人が多いからです。
今回は中小企業が情報発信を行う際に陥りがちな「よくない考え方」を取り上げます。
「よくない考え方」の背景と弊害を整理しつつ、経営トップが取るべきマインドセットの変え方と社内体制づくりの具体策を解説します。
読んだ後には、「情報発信=コスト」ではなく「情報発信=資産形成」という視点で次の一手を打てるようになっているはずです。
「SNSはやっているようだけど、時間の無駄」
このように思う方にはぜひ読んでいただきたい内容です。
1.陥りやすい「情報発信に対する良くない考え方」
1-1.「SNSは業務の合間にやる、片手間で対応するもの」という認識
「空いた時間に更新しておいて」
こんなセリフを使っていませんか?
中小企業でよく見られるのが、SNSやブログの更新を「片手間」で行う業務だと捉えていることです。
むしろ、SNSに使う時間を考慮することがないほうが普通かもしれません。
「SNSなんてやってる暇あるなら他のことやってよ」
こんな雰囲気が社内にありませんか?
日々の業務に追われる中で情報発信の優先順位が低くなると、結果として継続的な発信が難しくなったり、質の低いコンテンツになってしまったりします。
1-2.「情報発信はスマホに慣れた若い人に任せればよい」という認識
中小企業では専任の広報担当者がいないことがほとんどです。
さらに、ホームページやSNS、ブログとなると「よくわからない」といって避けてしまう人がとても多いのが実際のところ。
結果として、社内でスマホなどを使いこなしている若い人に丸投げになっています。
しかし、情報発信は「会社全体の協力体制」があってこそ、真価を発揮します。
社内で企業理念が浸透していて、任せられる雰囲気であれば問題ありません。
問題なのは、企業上層部が「触れたくない」「苦手意識がある」からただ丸投げになってしまうこと。
丸投げするのに、SNSなどの目的が定まっておらず、とりあえず「フォロワーが増えれば良いだろう」と考えてしまうことです。
1-3.「すぐに結果が出ないと意味がない」という認識
情報発信は、すぐに目に見える成果が出るものではありません。
特にSNS運用やブログ記事の積み重ねは、中長期的な視点が必要です。
短期的な成果にこだわりすぎると、途中で挫折してしまう原因となります。
「3カ月やっても全然効果ない、時間の無駄だからSNSは止めます」
残念ながら、SNSで発信を始めた途端うなぎ上りに売り上げが上がるなんていうことはありません。
情報発信は、顧客との「信頼貯金」を積み重ねるようなもの。
フォローしていなくても来店のきっかけを作り出すこともあり、数字として表れない効果も実際にはあります。
このように目に見える効果を感じられないが、「背後ではブログやSNSの発信が影響している」ということも多いのです。
1-4.「フォロワー数が多いのが成功の証」という認識
最近のSNSの多くは、フォロワー数が多いアカウントを優遇するようにはできていません。
興味・関心に合う投稿を見せ、ユーザーが楽しめる場を作ることに重点を置いています。
フォロワー数が少ないアカウントの投稿でも、フォロワー数が多いアカウントと同じ機会と条件で表示させる動きがあります。
フォロワーがあまりいなくても、マッチした顧客層に届く可能性は十分にあるのです。
ですから、「フォロワー数をたくさん増やせば集客できる」といった認識でフォロワー獲得を目的に走るのはナンセンス。
質の高い投稿に反応した結果、フォロワー数が増えるのは自然なことですが、増えないからといって集客できないとは限りません。
例えば地方の小規模事業者は、その地域のユーザーに届けば十分であるかもしれません。
数万フォロワーは不要ですよね。
1-5.「バズるのが大事」という認識
バズる現象は、特に歓迎されることではありません。
一瞬、大盛り上がりをしても次の瞬間には静かになってしまうため、長期的な関係づくりにはならないからです。
むしろバズってしまうと、それ以降の投稿のエンゲージメントなどが相対的に下がるためアカウントの評価が落ちてしまうこともあります。
バズると何かと話題にされ良いことのようなイメージがありますが、デメリットがあることを覚えておきましょう。
バズを目的とした投稿はほぼ必要ありません。
2.そもそも情報発信は何のためにするのかを理解する
「他社もやっているから」
「知り合いにやったほうがいいと言われたから」
きっかけはこのような曖昧なものでも構いません。
しかし、そもそも企業が情報発信をするのはなぜなのか理解し、目的を決める段階は必ず踏んでおきましょう。
- 商品・サービス、企業そのものの認知を広げるため
- 企業イメージを向上させるため
- 顧客と交流し、より長期的な関係を築くため
- 自社について知ってもらい、採用につなげるため
- 企業イメージを向上し、利用者を増やすため
これらを見ると、情報発信は「オンラインの広報活動」といえます。
広報活動は立派な業務ですよね。
3.情報発信に対する認識をセットしよう
3-1.情報発信は広報機能であり経営資源
情報発信は、思いつきや流行りに乗る意味合いのものではありません。
設備や人材育成と同じく、中長期で利益を生む投資対象です。
コンテンツマーケティングに注力することは、企業や商品・サービスに向き合い、外部や時に内部に向けて真摯に情報を届けることです。
ホームページがなく、オンライン上に企業情報が「ほぼゼロ」の状態では、そもそも見つけてもらえません。
検討してもらうこともできない時代になりました。
知ってもらうには、企業が公式に情報発信することが第一。
広報活動は中小企業でも避けられないということですね。
3-2.情報発信は「業務」であると認識する
情報発信は、片手間でできるものではありません。
SNS投稿やブログ記事の執筆、動画制作など、それぞれに時間と労力が必要です。
業務の一環として組み込み、長期的な取り組みができるようにしましょう。
- 情報発信に割く時間を業務時間内に確保し、担当者に提供する
- 情報発信を評価項目の一つに組み込む
- 必要であれば、情報発信のためのツールやリソース(例:写真素材、動画編集ソフト)を提供する
4.経営層が率先して情報発信に取り組む
以前、私がSNS運用の支援をさせていただいたお客様の経営者の方は、まずご自身でSNSアカウントを実践し、ある程度形になってからスタッフに説明し、投稿したスタッフにはインセンティブを渡す仕組みを実行されていました。
経営者自身が情報発信の重要性を理解し、率先して取り組む姿勢を示すことは、従業員のモチベーション向上にもつながります。
5.外部の専門家やツールを活用する
社内に情報発信のノウハウが不足している場合は、外部の専門家(コンサルタント、SNS運用代行会社など)の力を借りるのも有効です。
実際、動画撮影などはやってみると難しさを感じる方も少なくありません。
思い切って撮影や編集を依頼したほうが総合的にコストが下がり効果も上がったという声はよくいただきます。
また、情報発信を効率化するためのツール(SNS管理ツール、アクセス解析ツールなど)も積極的に活用しましょう。
効果測定も重要です。
6.まとめ
中小企業の情報発信は、決して片手間でできるものではありません。
情報発信を経営資源と位置づけ、小さく始めて、大きく育てる意識で取り組めば、積み重ねが一年後に社運を左右する存在へと成長します。
- 業務の一環として認識し、時間や手間を担当者に提供すること
- 会社全体で自社のSNSアカウントの成長を協力する体制を整えること
やらなかった企業との差は、毎日一歩ずつ開き、やがて追いつけないほどになります。
まずは正しい認識を身に着け、一歩を踏み出しましょう。