アクセシビリティ重視のウェブ制作

チャコウェブ

株式会社CyberCats

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海外でウェブアクセシビリティに関する訴訟が急増って本当?現状について紹介

海外でウェブアクセシビリティに関する訴訟が急増って本当?現状を紹介

世界的に注目されているウェブアクセシビリティ。
創業23年のチャコウェブとしても、ウェブアクセシビリティは今一番注目している分野です。

海外ではすでに様々な法整備が進んでいたり、ウェブアクセシビリティ対応が義務化されている国もあります。
そんな諸外国に比べると遅れを取っている日本ですが、官公庁や大企業を中心にここ数年で少しずつ対応が進んでいます。

さて、日本では『障害者差別解消法』の改正により努力義務となることが決定しているウェブアクセシビリティ対応ですが、既に義務化されている国ではどのようなことが起きているのでしょうか。

アメリカを例に挙げると、ここ数年でウェブアクセシビリティに対応していないことを理由とした訴訟が大幅に増加しています。
中には、日本でも有名な大企業が訴えを起こされた例もあります。

今後日本でウェブアクセシビリティ対応が義務化されるかどうかは今のところ不明です。
ただ、可能性は0ではありません。

その時に慌てないよう、海外の事例を参照しながら今できることは何かを考えてみましょう。

 

諸外国のウェブアクセシビリティ対応

現在、ウェブアクセシビリティ対応を義務化したり、クリアすべき基準を設けている国がいくつもあります。
下記は、義務化や法整備を行っている国と、その国のウェブアクセシビリティに関する法律の一例です。

  • アメリカ・・・リハビリテーション法508条、障害を持つアメリカ人法(ADA)、航空アクセス法
  • 欧州連合(EU)・・・ウェブアクセシビリティ指令(Web Accessibility Directive)
  • ニュージーランド・・・Web Accessibility Standard1.0
  • オーストラリア・・・障害者差別禁止法
  • 韓国・・・障害者差別禁止法

これらでは、適用対象や基準、求められるレベル、対応までの期限などが定められています。

海外ではこのような法律を根拠として、ウェブアクセシビリティ関連の訴訟がたくさん起きています。
年々増加傾向にあり、アメリカでは2015年に100件未満だったウェブアクセシビリティ訴訟が、2022年では3000件前後になったとも言われています。

では、実際にどのような訴訟が起きているのでしょうか。

 

実際に起きた訴訟

 

シドニーオリンピック

シドニーのオペラハウス

2000年に開催されたシドニーオリンピックが、ウェブアクセシビリティに関する訴訟事例としては世界初であると言われています。

訴えを起こした人物は視覚障がいを持っており、点字ディスプレイを使用していました。
シドニーオリンピックの公式ウェブサイトがウェブアクセシビリティに対応していなかったことで、目が見える人と見えない人の間に情報格差ができてしまい、それが差別にあたるとして訴訟に発展したようです。

参考:Web Accessibility Initiative(WAI)のアーカイブ記事(英語)

 

 

ドミノ・ピザ

4種類のスライスされたピザ

視覚障がいを持つ男性が2016年にドミノ・ピザを訴訟したという、アメリカの事例です。

ウェブサイトとモバイルアプリがアクセシブルなものではなかったため、ピザを注文したりクーポンを利用することができず、裁判に発展しました。

2021年、連邦地裁は視覚障がい者の男性に勝訴判決を下し、ドミノ・ピザに対して同社のウェブサイトをウェブアクセシビリティに対応させることと、原告の男性に4,000ドルの損害賠償を支払うことを命じました。

参考:アメリカの法律事務所の記事(英語)

 

Amazon

オンラインショップをイメージさせるノートパソコンとショップカート、クレジットカードが並ぶ

Amazonに対しては、2018年に視覚障がいを持つ男性を筆頭とした集団訴訟が起こされました。
ウェブサイトがスクリーンリーダーや点字ディスプレイに対応しておらず、今まで他のユーザーと同様の充実したサービスが受けられなかったことが差別行為にあたるとして、改善が求められた裁判です。

参考:ウェブアクセシビリティをめぐり訴訟を起こされたトップ企業(英語)
Amazon集団訴訟についてのニュース記事(英語)

 

日本で訴訟になる可能性は?

日本国内でウェブアクセシビリティに関する訴訟があったという情報は、これまでに確認されていません。
ただ、日本企業が海外で訴えられたり、現地法人が訴訟を起こされたということはあるようです。
グローバル企業はもちろん、英語版コンテンツなどを運営している場合は早目に対策を講じる必要がありそうです。

反対に、日本国内でのみ活動している企業はウェブアクセシビリティ対応が不要かと言うと、そうではありません。

『障害者差別解消法』が改正されることになり、ウェブアクセシビリティ対応を含む「環境整備」がこれまでの「実施に努める」から「努力義務」となります。
努力義務なので今のところ罰則はありませんが、将来的に義務化されることも考えられます。
義務化される日が来ることも視野に入れ、今から少しずつ対応を進めていくことが望ましいでしょう。

 

まとめ

今回は、ウェブアクセシビリティ対応が十分でなかったことがきっかけで訴訟に発展した海外の事例をご紹介しました。

今のところ、日本国内でウェブアクセシビリティ対応に関する訴訟があったという話は出ていません。
しかし、海外に向けてビジネスをしていたり海外に拠点がある企業の場合は、日本にいても裁判を起こされる可能性が0ではありません。

そういったリスクも考えつつ、できるところから少しずつでもウェブアクセシビリティ対応を進めていくことが大切です。
「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」と「JIS X 8341-3: 2016」を参考に、できるところから改善していきましょう!


          この記事を書いた人        
山口 ウェブアクセシビリティマネージャー
株式会社Cyber Cats ウェブアクセシビリティマネージャー。
コーダー、ディレクターを経験する中で「使いやすいホームページ」の重要性を強く感じ、ウェブアクセシビリティ向上に取り組み始めました。
最初は個人的に行っていた活動でしたが、少しずつチームに広がり、現在は組織全体の活動となっています。
自社ホームページのウェブアクセシビリティ監修の他、社内勉強会を開いてメンバーへの情報共有や意見交換を行っています。
また、ウェブアクセシビリティをテーマにブログ執筆を行っており、基本原則の解説や自社ホームページを例に挙げて改善例の紹介などを行っています。
最近はアクセシビリティに関わる施設への取材も開始し、そこで得た経験からウェブアクセシビリティを考える活動を行っています。
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